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金木犀

金木犀の香りが至る所で漂う季節になってきましたね。

 

5年前の今頃、私は15年間過ごした東京を後に、新潟へ戻って来ました。

東京を離れる日、アパートの玄関を出たら、隣の家の金木犀の香りがしました。

その時

「この先この匂いを嗅いだら、私はどんな気持ちになるんだろう」と思ったのを覚えています。

 

お腹にはもうすぐ生まれる我が子。

一人で出産をすると決めて、東京を離れました。

少しの前向きと、途方もなく多くの不安とが入り混じった感情。

その多くの不安を取り除いてくれたのが、お腹にいる娘でした。

 

大丈夫。大丈夫。

お腹の中で動く度、そう言われている気がしたし、私も娘にそう言いました。

大丈夫。絶対大丈夫。

 

東京を離れる前日、東京で一番大好きだった場所に行きました。

東京タワー。

そこで東京の夜景を観て、それはもう心が爆発しそうになったわけですよ。

言葉ではどうにも説明できない感情。

ただただ涙が止まらなくて、友達がずっとお腹を撫でながら

「あなたのママはすごいんだよ。とっても優しくてとっても強いんだよ」って言ってくれていました。

 

 

香りには、記憶を呼び戻す作用があります。

金木犀の香りは、私にとってそんな記憶。

今となっては、とても優しくて温かい記憶です。

 

 

そして新潟に帰ってきて一番最初に行った場所が、母校です。

今はものづくり学校になっていて、姿が可愛らしく変わって、そこにありました。

 

ただいま。って小さい声で言いました。

その日も秋晴れで、澄んだ空気が気持ちよくて、空が高くて、思いっきり深呼吸をしました。

 

 

そこの芝生で走り回る、もうすぐ5歳の娘。

かつて土のグラウンドだった場所は、綺麗に整備されて芝生の広い広場になっています。

 

不思議だな。幸せだな。

幼い頃の自分が見てきた風景と、幼い自分の娘が見ている風景。それを見ている大人になった私。

 

 

芝生の上に引いてあった白線を見て「雪だ!!」と驚く娘。

かわいいなぁ。

ありがとう。

 

 

roco